2020年3月29日日曜日

セラミック

関連:インサート被削材に適したインサートの使い分け

セラミックは高温環境に強く、高硬度で耐摩耗性、耐酸性の特徴を持っています。インサートチップとしてはK種(鋳物)H種(高硬度材)S種(耐熱合金)用に使用されます。

被削材に適したインサートの選択


▷関連:インサートJIS B 4053:2013「切削用超硬質工具材料の使用分類及び呼び記号の付け方
旋削ホルダや ミーリングホルダに取り付ける「インサートチップ」は、被削材ごとに使い分けることが必要です。
各工具メーカーのカタログに書かれた製品の切削条件は、被削材に適した工具(材質・コーティング)の選択がされていなければならないため、注意してください。

表1.被削材別に分類されたインサートチップの種別(引用:JIS B4053:2013)


識別記号
(種)
識別色
被削材
P
青色

鋼,鋳鋼(オーステナイト系ステンレスを除く。)
M
黄色
ステンレス鋼
オーステナイト系オーステナイト/フェライト系,ステンレス鋳鋼
K
赤色
鋳鉄
ねずみ鋳鉄,球状黒鉛鋳鉄,可鍛鋳鉄
N
緑色
非鉄金属
アルミニウム.その他の非鉄金属,   非金属材料
S
茶色
耐熱合金・チタン
鉄,ニッケル,コバルト基
耐熱合金,チタン及びチタン合金
H
灰色
高硬度材料
高硬度鋼,高硬度鋳鉄,チルド鋳鉄



  • P種」は、低~高炭素鋼や低~高炭素合金鋼[SCM(クロムモリブデン鋼),SCr(クロム鋼),STKM(パイプ材),SKD(合金工具鋼)の加工に向いています。
  • M種」は、ステンレスの加工に向いています。表1に含まれていませんが、硬さと耐食性を兼ね備えた「析出硬化系ステンレス(SUS630や17-4PHなど)」も適応する被削材に含みます。
  • K種」は鋳物全般に対応します。表1内の「球状黒鉛鋳鉄」は、FCD(ダクタイル鋳鉄)のことです。
  • N種」非鉄金属用。銅、銅合金、アルミ、アルミ合金など。
  • S種」難削材用。チタン、耐熱合金(ニッケル合金)用
  • H種」高硬度材、焼き入れ鋼用。焼入れ処理後の中仕上げ加工に使用します。

2020年3月26日木曜日

超硬合金

▷関連:インサート/JIS B 4053:2013「切削用超硬質工具材料の使用分類及び呼び記号の付け方」/ISO 513

JIS B 4053では、超硬合金について表1.のように定義されています。

表1.超硬合金の種類

材料記号 材料の分類
HW 金属及び硬質の金属化合物から成り,その硬質相中の主成分が炭化タングステンであり,硬質相粒の平均粒径が1μm以上であるもの, 一般に,超硬合金という。
HF 金属及び硬質の金属化合物から成り,その硬質相中の主成分が炭化タングステンであり,硬質相粒の平均粒径が1μm未満であるもの. 一般に超微粒超硬合金という。
HT 金属及び硬質の金属化合物から成り.その硬質相中の主成分がチタン,タンタル(ニオブ)の,炭化物,炭窒化物,窒化物であって.炭化タングステンの成分が少ないもの。一般に,サーメットという。
HC 上記の超硬合金の表面に炭化物,炭窒化物,窒化物(炭化チタン・窒化チタンなど),酸化物(酸化アルミニウムなど),ダイヤモンド,ダイヤモンドライクカーボンなどを, 1層又は多層に化学的又は物理的に被覆させたもの。一般に,被覆超硬合金という。


1.超硬合金(HW)、超微粒超硬合金(HF)

炭化タングステン(WC)を多く含み、ハイスより硬い金属。JIS B 4053では、金属組織の細かさによって、『HW』と『HF』に分類されています。
主成分のタングステン(W)と結合材として使用されるコバルト(Co)はレアメタルであり、どちらも「希少」で資源には限りがあります。対策を打たなければ、持続可能な金属にはなり得ない為、現在、タングステンやコバルトについては、使用済みの超硬合金のリサイクルや、代替品の研究・開発が行われています。
図1.超硬合金(無印:HW)と超微粒超硬合金(HF)について
※超々微粒、ナノ微粒超硬合金と呼ばれるものもある。

2.サーメット(HT)

「超硬合金とは炭化タングステン(WC)を主成分として持つ金属」を指すのであって、「サーメットはサーメットである!」というのが、世間の一般的な認識である気がします。

しかし、JIS B 4053 内『1 適用範囲 注1)』において、
超硬合金とは,超硬合金,サーメット,超微粒超硬合金およびこれらに炭化物,窒化物,酸化物などを被膜した合金の総称である。ISO 513:2004ではCarbidesとしている。
とあり、サーメットも超硬合金に分類されています。超硬合金の中に超硬合金が含まれている包含関係に、???な感じもしますが、「ISO 513:2012」のABSTRACTを読む限り、サーメットが登場してこないのは、やはり超硬合金(hardmetals)に含まれているからなのだろうと推測が可能です。(詳細は未確認ですが、元ネタがそうなっているなら、仕方ないでしょう笑。)

図2.に示すようにサーメットもCarbides(炭化物)であることに違いなく、サーメットは、そんな感じの超硬合金です。特記事項としましては、『仕上げ用(送り速度はゆっくり)』にてご利用ください。
図2.サーメット(HT)
※炭化タンタルと炭化ニオブはWCの生成を抑えるために添加されるようです。

3.被覆超硬合金(HC)

HW(超硬合金),HF(超微粒超硬合金),HT(サーメット)のそれぞれに対して、TiN(窒化チタン), TiAlN(窒化チタンアルミ), TiCN(窒炭化チタン),CrN(窒化クロム),DLC(ダイアモンドライクカーボン)などでコーティング(被覆)処理が行われたもののことをいいます。また、コーティングのされた超硬工具は、『コーティング工具』と呼ばれます。
コーティング工具のメリットとして、刃先の「硬さ強化」によって、切削条件(切削速度、切り込み量、送り速度)を上げたり、「耐欠損性、耐溶着性、耐食性、耐摩耗性」の向上によって、工具の長寿命化を期待することができます。
コーティングの手法には、PVD(Physical Vapor Deposition:物理蒸着法)とCVD(Chemical Vapor Deposition:化学蒸着法)の2種類があり、図3にざっくりと整理します。

図3.PVD

[PVDの特徴]

  • CVD法に比べ 処理温度が低く、圧縮残留応力がかけられるため、チッピングに強いしないなどの特長があります。



図4.CVD

[CVDの特徴]

  • PVD法に比べ、一般的に(※)コーティングの密着力が強く、複雑な形状に対しても均一な被膜の生成ができます。(※熱CVDの場合。プラズマCVDの場合は状況が異なります。)

2020年3月24日火曜日

振れ止め

▷関連:旋盤

旋盤加工によってワークのたわみが起きやすくなる「L/Dの大きな」シャフトワークなどを切削する場合には、ビビりを防ぐために振れ止めを使う場合があります。



振れ止めを使用すると、旋盤加工する箇所の「L/D」を小さくすることができ、ワークがたわみにくく(⇒ビビりがおきにくく)なります。


2020年3月23日月曜日

アングルカッター

▷関連:フライス工具に関する分類

「アリ溝」を加工するために使用するためのフライス工具です。
任意の角度を加工するために、専用特殊工具を作成してくれるメーカーもあります。


側面と平面の加工(1.)をした後に角部の加工(2.)を行います。


2020年3月15日日曜日

フライス工具に関する分類

▷関連:JIS B 0172:1993/JIS B 4211

フライス工具は、Fräse(独:フライス)と関連のある言葉で、ミーリング工具(Milling tools[英]:フライス加工)ともいいます。
※[蛇足ですがGoogle翻訳によれば「フライス工具」をドイツ語に翻訳するとFräswerkzeuge(フレツウェグツァイガ)だそうです。]

2020年3月2日月曜日

超硬ボーリングバー

▷関連:内径バイト

内径加工で深い穴を加工したいときにバイトシャンクの径(D)に対してシャンクの長さ(L)が大であるものを選択しなければならないときがあります。

シャンクの径Dに対するシャンクの長さをL/D(エルバイディー)と呼びます。
L/Dが大になるほど『ビビり』が発生しやすくなり、通常の切削条件での加工を行うことが困難となります。

目安として、L/Dが4を超えると製品の加工精度や品位の確保が困難となったり、加工チップの欠損を起こす場合があるため、超硬合金で作られた超硬ボーリングバーの選択を検討します。

※各社メーカーのカタログ値として、超硬ボーリングバーは一般的に『L/D<7』の範囲にて使用することになっています。

※1、2工程で半分ずつの加工を行う「ツナギ加工」が許される場合は、そうすることで、L/Dを小さくすることができます。