2020年3月26日木曜日

超硬合金

▷関連:インサート/JIS B 4053:2013「切削用超硬質工具材料の使用分類及び呼び記号の付け方」/ISO 513

JIS B 4053では、超硬合金について表1.のように定義されています。

表1.超硬合金の種類

材料記号 材料の分類
HW 金属及び硬質の金属化合物から成り,その硬質相中の主成分が炭化タングステンであり,硬質相粒の平均粒径が1μm以上であるもの, 一般に,超硬合金という。
HF 金属及び硬質の金属化合物から成り,その硬質相中の主成分が炭化タングステンであり,硬質相粒の平均粒径が1μm未満であるもの. 一般に超微粒超硬合金という。
HT 金属及び硬質の金属化合物から成り.その硬質相中の主成分がチタン,タンタル(ニオブ)の,炭化物,炭窒化物,窒化物であって.炭化タングステンの成分が少ないもの。一般に,サーメットという。
HC 上記の超硬合金の表面に炭化物,炭窒化物,窒化物(炭化チタン・窒化チタンなど),酸化物(酸化アルミニウムなど),ダイヤモンド,ダイヤモンドライクカーボンなどを, 1層又は多層に化学的又は物理的に被覆させたもの。一般に,被覆超硬合金という。


1.超硬合金(HW)、超微粒超硬合金(HF)

炭化タングステン(WC)を多く含み、ハイスより硬い金属。JIS B 4053では、金属組織の細かさによって、『HW』と『HF』に分類されています。
主成分のタングステン(W)と結合材として使用されるコバルト(Co)はレアメタルであり、どちらも「希少」で資源には限りがあります。対策を打たなければ、持続可能な金属にはなり得ない為、現在、タングステンやコバルトについては、使用済みの超硬合金のリサイクルや、代替品の研究・開発が行われています。
図1.超硬合金(無印:HW)と超微粒超硬合金(HF)について
※超々微粒、ナノ微粒超硬合金と呼ばれるものもある。

2.サーメット(HT)

「超硬合金とは炭化タングステン(WC)を主成分として持つ金属」を指すのであって、「サーメットはサーメットである!」というのが、世間の一般的な認識である気がします。

しかし、JIS B 4053 内『1 適用範囲 注1)』において、
超硬合金とは,超硬合金,サーメット,超微粒超硬合金およびこれらに炭化物,窒化物,酸化物などを被膜した合金の総称である。ISO 513:2004ではCarbidesとしている。
とあり、サーメットも超硬合金に分類されています。超硬合金の中に超硬合金が含まれている包含関係に、???な感じもしますが、「ISO 513:2012」のABSTRACTを読む限り、サーメットが登場してこないのは、やはり超硬合金(hardmetals)に含まれているからなのだろうと推測が可能です。(詳細は未確認ですが、元ネタがそうなっているなら、仕方ないでしょう笑。)

図2.に示すようにサーメットもCarbides(炭化物)であることに違いなく、サーメットは、そんな感じの超硬合金です。特記事項としましては、『仕上げ用(送り速度はゆっくり)』にてご利用ください。
図2.サーメット(HT)
※炭化タンタルと炭化ニオブはWCの生成を抑えるために添加されるようです。

3.被覆超硬合金(HC)

HW(超硬合金),HF(超微粒超硬合金),HT(サーメット)のそれぞれに対して、TiN(窒化チタン), TiAlN(窒化チタンアルミ), TiCN(窒炭化チタン),CrN(窒化クロム),DLC(ダイアモンドライクカーボン)などでコーティング(被覆)処理が行われたもののことをいいます。また、コーティングのされた超硬工具は、『コーティング工具』と呼ばれます。
コーティング工具のメリットとして、刃先の「硬さ強化」によって、切削条件(切削速度、切り込み量、送り速度)を上げたり、「耐欠損性、耐溶着性、耐食性、耐摩耗性」の向上によって、工具の長寿命化を期待することができます。
コーティングの手法には、PVD(Physical Vapor Deposition:物理蒸着法)とCVD(Chemical Vapor Deposition:化学蒸着法)の2種類があり、図3にざっくりと整理します。

図3.PVD

[PVDの特徴]

  • CVD法に比べ 処理温度が低く、圧縮残留応力がかけられるため、チッピングに強いしないなどの特長があります。



図4.CVD

[CVDの特徴]

  • PVD法に比べ、一般的に(※)コーティングの密着力が強く、複雑な形状に対しても均一な被膜の生成ができます。(※熱CVDの場合。プラズマCVDの場合は状況が異なります。)

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