2020年6月29日月曜日

加工時間の計算(旋盤の場合)②~定切削速度I

定切削速度で倣い加工の場合

定切削速度(G96)指令の場合、加工時間では以下の式で表すことができます。

式1.定切削速度の場合の加工時間[sec]


 但し、上の式1が使用できるのは、加工径D[mm]「一定」であるような『特別な場合』に限定されます。
 倣い(ならい)加工のように連続的に加工径Dが変化する場合は、主軸回転数N(=1000・V÷πD)も変化するので、式1をそのまま使うことはできません

図1.加工径Dが変わると主軸回転速度と刃具の速度も変わる。


加工径Dが変化する場合の加工時間

そこで、加工径が変化する場合には、加工径の平均値を用いて計算を行います。
以下の図の場合、下記の①~④の和から加工時間を求めます。
  • D1~D2→ 式1のDに(D1+D2)÷2 を代入,式1のLにL1を代入・・・①
  • D2~D3→ 式1のDに(D2+D3)÷2 を代入,式1のLにL2を代入・・・②
  • D3~D4→ 式1のDに(D3+D4)÷2 を代入,式1のLにL3を代入・・・③
  • D4~D5→ 式1のDに(D4+D5)÷2 を代入,式1のLにL4を代入・・・④


2020年6月28日日曜日

加工時間の計算(旋盤の場合)①

概要

  • NC工作機械は、プログラム通り正確に加工を行うため、計算によって加工時間の把握をすることができます。
  • 加工時間を計算して把握するのは、生産計画に無理がないか(実現可能かどうか)の検証を行うために用います。
  • 旋盤の場合、1秒を争う大量生産部品については特に加工時間の管理が重視されています。
  • 主軸回転数を高速にすることができない加工径の大きな部品や、複合加工機で複雑な平面加工を多用するなど長時間の加工を行う場合にも有用な考え方です。
  • 各チップの切削距離を把握することで、工具チップの寿命の管理を行うこともできます。

加工時間の計算
加工内容によって加工時間は大きく変わります。


計算方法

加工時間[sec(秒)]の計算にはNCプログラムで指令される以下の項目を使用します。
  • 主軸回転数:N[回転/min](G97指令の時)
  • 切削速度(周速):[m/min](G96指令の時)
  • 送り速度:[mm/rev]
  • 刃具の移動距離:[mm](G01,G02,G03指令で工具が移動する距離)

毎分当り回転数(G97)の場合

G97の指令は主軸回転数が一定のため、加工時間は次の式で表すことができます。
式1.毎分当り回転数の場合

【説明】
 毎分当り回転数Nの単位[rev]は1分間で回転する主軸の回転数を表し、送り速度F[mm/rev]は主軸が1回転した時に刃具が移動する距離[mm]を表しています。
そのため、刃具の移動する速さは(F×N÷60[mm/sec])となります。
これを「時間=距離÷速さ」の式に当てはめると式1.のようになります。


定切削速度(G96)の場合

G96の指令は切削速度が一定のため、加工時間は式1から次式で表すことができます。

式2.低切削速度の場合
【説明1】
式2は、式1に対して、以下の式3を代入しています。
式3.切削速度と主軸回転数の関係
【説明2】
切削速度Vは、1分間当りの刃具が切削を行う距離[m]を意味するため、円周の長さ(π・D[])に1分間当たりの主軸回転数(N[rev])をかけて1000で割ります。


2020年6月9日火曜日

1個の生産に必要な時間

「生産管理」の上で、『目標個数を達成できるかどうか』を判断するために1個の生産に必要な時間を知っておくことが必要です。




「1日は24時間」、「1ヶ月は28~31日」に制限されるので、目標個数によっては、工場の稼働時間(日数・シフト)の見直しが必要にもなることもあります。



完全な負荷オーバーの場合

しかし、例えば、1か月の目標生産個数が100000個の時に1個の生産に1分を要する場合、100000[個]×60[秒]=6000000[秒]
→6000000[秒]÷(24[時間]×3600[秒])≒70[日]になってしまいます!

「交代勤務による24時間フル稼働、稼働率100%の部品生産」という事実上あり得ない条件でさえ、完全に負荷オーバーであるため、1個の生産に必要な時間を短くする必要があります。

[方法]
  1. 加工プログラム(切削条件・加工パス、加工内容)を見直す。
  2. 加工機(工作機械)の台数を増やす。
  • 部品図面と実加工された完成部品(製品)とを見比べて、製品の品質が「良すぎる」と思われる場合、作り方を見直し、それを加工プログラムに反映することによって加工時間を短くすることができます。
  • ただし、個人的な考えとして、「過剰品質」や「効率化」という言葉を前面に出しすぎた加工時間の短縮には「品位や精度のバラつきに関する評価」や「工具寿命管理の見直し」が必要であり、局所的に生産計画Dを満足させても、品質Q・コストCに悪影響を与えるのであれば『やる意味はない』と思います。
  • 設備を増設する場所とお金があれば、加工機を増やすことも一つの対策案になります。上の例についていえば、機械が4台あれば70÷4=17.5となるので、24×0.8=19時間/日稼働の条件で休日出勤か残業が可能であれば何とかなりそうです。
  • ただし、継続的な受注がなければ安易な設備の増設などするべきでないのは当然の話です。
  • →従来、町工場はお隣さん同士で相互に助けあい(負荷調整)をしていたわけで、そういう柔軟な自主独立性を維持を許したままどこかの慈善団体が丸ごと傘下に組み込んだりすれば、面白いことになるのでは?と思ってみたりみなかったり。笑。